覚えた英語表現がすぐに消えてしまう理由
覚えたはずの表現が会話で出てこないのは、意志の問題ではありません。記憶の仕組みと、表現を長くとどめておくためのタイミングを整理しました。
しっかり覚えたはずの表現なのに、いざ英語で話す場面になると出てこない。ノートで見て、線まで引いたのに口からは出てきません。そのたびに自分を責めたくなりますが、ここには意志や才能とは関係のない理由があります。
表現が消えていくのは、私たちの脳がもともとそう働くからです。この記事では、なぜそうなるのか、そして覚えた表現を長くとどめておくには何を変えればいいのかを整理していきます。
忘れるのは脳が壊れているからではありません
脳は一日に膨大な量の情報を受け取ります。それをすべて鮮明に保存すると、肝心なものを取り出しにくくなるので、脳は二度と使われない情報を静かにぼやけさせていきます。一度見て二度と出会わなかった英語表現は、脳にとってまさにその対象です。
記憶の研究では、昔から知られている流れがあります。学んだ直後に記憶が最も速くぼやけ、時間が経つほどぼやける速さがゆるやかになるというものです。ですから昨日覚えた表現が今日おぼろげなのは失敗ではなく、誰にでも起こる自然な過程です。
一度見た表現と、何度も再会した表現は違います
一度見た表現は、道ですれ違った人の顔に似ています。どこかで見た気はするのに、名前は思い出せません。一方、さまざまな場面で何度も再会した表現は、長く知り合った人のように、必要な瞬間にすぐ浮かんできます。大切なのは繰り返した回数ではなく、再会の仕方です。
- 覚えたその日に、今日あった出来事にその表現を入れて一文つくってみる
- 数日後、まったく別の話題で話すときに同じ表現をもう一度使ってみる
- 目で読むだけでなく声に出して言い、口にも記憶を残す
- その表現に初めて出会った場面を一緒に思い出す。脳は状況と結びついた記憶をより長くとどめます
文脈とともに覚えた自分の文は強い
例文集にある他人の文と、自分の話を込めて実際に口にした文とでは、保存のされ方から違います。自分の文には、そのときの相手や状況、感情が一緒に結びついています。あとで似た場面が来ると、その記憶が手がかりになって表現が自然について出てきます。
だから表現を長く残したいなら、覚える時間より使ってみる瞬間を増やすほうが効率的です。完璧な文でなくてかまいません。ぎこちなくても自分の状況に合わせて一度口にした表現は、目で十回読んだ表現より長く残ります。
忘れる直前が、もう一度出会うのにいちばんいい瞬間です
復習で大切なのは回数よりタイミングです。学んだ直後にすぐ見返すのは、まだ鮮明な記憶をもう一度見るだけなので、残るものが少ないのです。反対に完全に忘れてしまった後では、最初から学び直すのとあまり変わりません。記憶が少しぼやけたとき、つまり「あれ、これ何だったっけ」と思う瞬間にもう一度出会うのが、いちばん長く残ります。
がんばって思い出すたびに、記憶は少しずつ確かになっていきます。
全部を一人で覚えておこうとしなくて大丈夫です
表現ごとに覚えた日が違い、ぼやける速さも違うので、このタイミングを一人ですべて管理するのは簡単ではありません。だから忘れまいと力むより、もう一度出会える仕組みをあらかじめ作っておくほうが現実的です。Griingでは、コーチと話しながら使った表現が表現バンクの残高に自動でたまり、忘れかけたころにコーチのほうからその表現を会話にまた出してくれます。今日覚えた表現がぼやけても大丈夫、また出会えばいいのですから。